抜粋:【コラム】<前朝日新聞主筆若宮の東京小考>夢に見た「日韓共同制作新聞」創刊号
よく知っている韓国某新聞社の記者から正月にeメールを受けてびっくりした。「東亜日報が紙面改革のために若宮さんを政治部長に任命した」という新年の初夢を見という内容だった。私は就任の記者会見もしたという。私に長い間、このコラムを書くようにしてくれている東亜日報さんだが、彼はなぜ奇想天外な夢を見たのだろうか。
想像に陥って、16年前のことが思い出された。それは私が朝日新聞政治部長だった1999年4月1日のことだった。政治面に「小渕首相、外国人の長官を登用することに」という記事を掲載した。小渕恵三首相(当時)が日本の大改革を目指し決断したとして、候補者として改革の実績があるゴルバチョフ元ソ連大統領とサッチャー元英国首相など大物の名前を挙げた。エイプリルフールのいたずらだったが、真剣な解説記事まで乗せて効果も結構大きかった。本当だと受け取られた読者も多くて、その中には、腹を立てて「こんなバカな」と首相官邸に飛び込もうとする自民党議員まで出てきたという裏話だ。韓国の某放送局特派員などは、これを信じて東京から生中継で報道してしまった。私たちは、次の日の紙面で「お騒がせしました」と事実を明らかにしたが、読者の反応は「いたずらが過ぎる」と「ユーモアに感心した」が半々で、抗議と励ましの電話や手紙が殺到した。幸いなことに小渕首相は「どうせならもっと若い人を起用したい」とユーモアで受け入れてくれた。
ところで、国の中枢を担う閣僚は論外にして、果たして新聞社は、編集幹部に外国人を登用することができるだろうか?民間企業では、日産自動車のように外国人を社長にした例もあるが、言論を命とする新聞社は事情が異なる。特に韓国の新聞に日本人を起用することなどは、想像すらできない。今、日本の一部メディアが「嫌韓」に染まっているのは、(戦争時の)嫌な過去を連想させるが、一方で解放(光復)されてから70年が過ぎても、韓国メディアに抵抗時代の残滓が多いのではないか。
しかし、そこでまたふと思う。いっそ、韓日が共に作る新聞は、出来ないだろうか?経済はパートナーシップの時代になってきており、ドラマも映画もポップも今では新しい文化が行き来し、共同制作も珍しくない。共に作る新聞があっても、変なことではないだろう。言葉は韓国語と日本語の併用だ。事実は、正確に調べて客観的報道に徹して、異なる材料と解釈があれば、すべて公平に紹介する。基本理念は、東アジアの平和と繁栄、そして国家権力からの独立である。
若宮啓文:日本国際交流センターシニアフェロー前朝日新聞主筆
【記事】
http://news.donga.com/Column/3/all/20150115/69094583/1
posted by クライバー at 04:38|
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